お久しぶりです、佐藤公徳です。
本当に….本当に久しぶりにこの日記を書いています。たぶん4年ぶりくらい?
最近、時間があるときにSNS、特にInstagramを眺めることが多いのですが、そこで見かける美容師関連の投稿について僕が少し違和感を感じたことを書きたいと思います。
SNSと美容師の投稿
私のスマホのInstagramには、美容師や美容院経営に関連する投稿が頻繁に表示されます。
これは、Meta社が私の職業情報を元にターゲティング広告を出しているからでしょう。同業者の投稿を見るのは楽しいですが、最近流行している「ビフォーアフター」の変身動画について、少し気になる点がありました。
ビフォーアフターの変身企画
「ビフォーアフター」の変身企画は、お客様の来店前と施術後の違いを見せるもので、以下のような内容が一般的です。
– ロングヘアをバッサリカット!
– 乱れたヘアスタイルをすっきりリフレッシュ!
– くせ毛をまっすぐなストレートヘアに!
こんな感じの企画は良くあることですし、私もお客様の同意を得て、ビフォーアフターの写真や動画を撮ることがあります。
美容師業界の間で、このビフォーアフターのショート動画で新規客を獲得するのが、今、大流行りなんです。
しかし、個人的に問題だと感じる事もあります。それは、以下のような過激なタイトルをつける投稿です。
– 「ブス女と呼ばれ続けた学生時代…そして夫に捨てられた私が見違えるようになるまであと5秒」
– 「49歳、チビ、デブ、ハゲの三拍子揃った僕の大変身」
– 「出っ歯が原因で壮絶ないじめ…ショートヘアで奇跡の大逆転」
– 「娘にも『オバさん』と呼ばれた老け顔の私がヘアカラーでアイドル並みに若返るまで」
こういった過激なタイトルをつけ、美容師が企画したショート動画の投稿がものすごく流行っています。
だいぶ多いです。めちゃくちゃ多いです。
こんな感じの過激で「思わずクリックしちゃいたくなる」「続きが見たくなる」ようなショート動画が。
そりゃそうです。
「 乱れたヘアスタイルをすっきりリフレッシュ!」みたいな超つまんない、なんの個性もないようなタイトルのショート動画よりも、
「出っ歯が原因で壮絶ないじめ…ショートヘアで奇跡の大逆転」
の方が遥かに人は続きを見てみたい!と思う事でしょう。
しかもご丁寧に、「彼女いない歴=年齢の、「童貞」な僕が、髪型ひとつでこんなにオシャレになって彼女ができる!」みたいなシンデレラストーリー仕立てになっているショート動画まであります。
というか、彼女がいないとか、ハゲてるとか、オバさんとか、童貞とか、そんな人を貶める言葉使って得するのは、
投稿者だけであり、動画が再生されればされるほど投稿者側は儲かり、そしてモデルになった被写体は世間に恥を晒すことになります。まるで生贄です。
お客さん側から「私ってもうオバさんだからさ〜」とか、
「僕、ハゲちゃってるんで切るとこなくてゴメンなさいね〜」
「顔がブスだから切り抜きみたいにならないとおもうけど…」
とか、美容師をしているとたしかに話の流れで「お客さん側から」そう言われることはあります。
でも、そこで美容師側が、
「確かにオバサンですからしょうがないですよね!」
「確かにおっしゃる通り、ハゲ散らかしちゃってますもんね〜」
などの事を相槌でも言ったら最後、美容師として終わりです。
というかそんな心無い返答をするヤツは、人間的にも「終わっている」と言えるでしょう。
美容師的な返答の正解は、
「そんな事ないですよ〜、とっても素敵だと思いますよ〜」とか、
「素敵に変身できるように頑張るので仕上がりを楽しみにしてて下さいね〜」とか、
そんな感じでお客様からの自虐ネタには
「YESともNOとも言わず、うまいことサラッとかわす」
「質問に対してまともに真正面からのマジの回答をしない」
ことが大事なんです。
もちろん、真剣なお悩みとして、髪のプロである美容師としての意見を聞きたくてお客さんはおっしゃっているのだな、という場合は、
こちらも毛髪のプロとして真剣に、本気で回答をします。
が、基本的に人間って自虐ネタをいったところで「そうだよね、俺もそう思ってたし」なんて絶対言われたくないはず。
あと、自分を卑下して自虐する人って、どこかで自分に対する「恥ずかしさを隠すために」言ってる場合も多いと僕は思うんです。
「あたしはオバさんだから何やっても似合わないかもしれないですけどぉ〜」
「俺はハゲてるからかっこよくカットしてくれ、なんて言いずらいんだけどねぇ」
っていう感じに自分を卑下してくるお客さんって、それはあくまでテレ隠しであり、本心で自分で「心から思っていること」ではないと思う。
むしろ、
「そんなことはないよ、あなたは全然素敵ですよ、自信持って下さいね。」
という言葉をプロの美容師の口から出るのを、待っているのではないでしょうか?
(だから僕は仕事の時は基本的に人を褒めまくります)
そして僕たち美容師は、
「ああ、この髪型にしたい、というのは、おそらくお客さんは言葉にはしていなかったけど、
深層心理では〇〇のような未来になりたい、という願望があるのだな」
というのを「汲む」のが大事だと思ってます。
ちなみにこれを書いている今、ふと思い出しましたが、
僕は学生時代に、とんでもなく人の心理を汲めない残念な美容師に当たった事がありまして、
それも記事にしていますのでよかったらどうぞ。笑
過激の度を超えた変身企画の動画というのは、もはやモデルになった個人を笑いもの、晒し者にさえしている感があるように感じます。
しかもその投稿に何千件もの「イイね!」が付き、そして賛否両論はありますがコメント数が数百件にものぼるような投稿さえあります。ほんとモデルになった人がかわいそう。
過激なタイトルとその影響
こうしたタイトルは、見た目の変化を楽しむ一方で、モデルとなった個人の尊厳を傷つける恐れがあります。
どれだけモデルとなった本人に同意を得たとしても、「チビ」「デブ」「ハゲ」「オバさん」といった言葉を大きく使われるのは、誰にとっても良い気分ではないでしょう。
美容師はお客様から信頼され、個人的な悩みを打ち明けられる存在です。
そんな私たちが、彼らの個人的な悩みを不特定多数が見るSNSに晒すのは、本当に良いことでしょうか?
おそらく、事前にモデルに同意を得ているとは思いますが、それでも過激なタイトルで晒すことは慎重に考えるべきです。
もし、自分の家族、身内、友達がこのような「こんなブスでも美容師の僕の凄腕で大変身!」「こんなモテない奴でも、俺様のヘアカットのテクニックであっという間にモテモテに!」みたいな変身企画にモデルに使われてたら、きっと悲しい思いをすると思います。しかもそれはインターネットに半永久的に黒歴史として残ります。
本当にこのような心無い行為をする美容師がちょこちょこ増えてきて僕は本当に残念に思います。
他人を陥れることで注目を集め、再生数を稼いでいるようなインフルエンサーには本当にみなさん注意して下さいね。
なぜ過激なタイトルが流行るのか?
理由は簡単です。「過激なタイトルが再生数を稼ぐ」からです。
SNSのアルゴリズムは、再生数やコメント数が多いほど拡散される仕組みになっています。そのため、美容師の一部はバズるために過激なタイトルをつけ、新規客を呼び込み、フォロワーを増やし、収益化を図ろうとしています。
再生数を稼ぐためにお客様を「生贄」として恥を晒すことは、誰かを傷つける行為です。
私自身も変身企画を行うことがありますが、お客様やモデルに恥をかかせるようなことは絶対にしません。SNSでフォロワーが多いとか、バズっているとか、そういったことだけではお客様を本当に満足させることはできません。
美容師として、人間性が問われる時代だからこそ、信頼関係を大切にし、お客様に寄り添ったサービスを提供していきたいと思います。
良い美容師なのか否か、は、SNSの再生数やフォロワー、そして知名度だけでは判断できない時代だと思っています。
僕は、最終的にはその人の「人間性はどうか?」というところが、最後までお客さんに選ばれる美容師の条件の一つだと思っています。
「美容師として素晴らしいか」、のまえに、まずは「人間としてちゃんとしてるか?」の方が重要だと思うんです。