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上手いヘアカットの為には技術も大事だが使う道具も大事

ヘアカット技術に関しては、美容師ならば誰でもそれぞれにこだわりがあると思うのですがヘアカット技術のみならずそれに使用する道具にまで徹底してこだわる必要性があると私は考えています。

その理由としては、美容師道具はお客様に「直接触れるもの」だからです。美容師がお客様の頭皮に直接、接点を持っているのは「手」と「道具」。

それ以外にありません。

だからこそ、自分の大切な両腕と同じように、道具といえども第三の腕なのだ、と考えています。特にカットに関しては毛髪に直接触れるものとして代表的なものにハサミがあります。

美容師用のハサミは種類が沢山ありまして、刃の形状、握るグリップ部分の形状などを合わせると、その組み合わせはかなりのパターン数にのぼります。

日本人の髪のクセは、4つのタイプに分かれると言われます。直毛、波状毛、捻転毛、縮毛です。この他に連珠毛などありますが、先ほど言った4タイプが最も割合が多いです。

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上記4タイプによってハサミを変えてカットする美容師、美容院は少ないです。実際に統計をとった訳ではなく感覚的な話にはなるのですが「ほぼ皆無」なのではないでしょうか??

一本のハサミの値段はピンキリではありますが、日々のサロンワークに耐えうるレベルのものであれば一本6~7万円で取引されています。ちなみに私の使用しているハサミは何種類もありますが、1本20万円を超えるものを使用しています。

ハサミの選定を私は大切に考えていて、僕はハサミを購入する際は東京から富山県までわざわざ仕入れをしにその為だけに行きます。

富山駅まで新幹線で行ったあと、ローカル線に乗り継いで何駅も移動し、さらに車で移動してハサミの製造工場まで行きます。

そこまでする理由は一つで、ハサミをゼロから作る会社が国内だとなかなか無く、地方に行かないと私が納得するものを作れないからです。ハサミは既製品ですでに出来上がっている中国産のものを仕入れ、加工して販売する業者も多い中、私はハサミの素材となる金属から指定して作ってもらうので金属板から購入することになります。

また、刃の部分と握るグリップの部分(ハンドルと呼びます)を違う素材で組み合わせ、ハサミの切れ味を左右する「ウラスキ」をその場で光を当ててチェックしながら製造工程を進めてもらうため、どうしても購入価格が高額になります。もちろん製造現場のその場で立ち会い、東京から私が持参した人毛ウィッグを使ってその場で切れ味を確認した上で納品してもらうので、本当に納得したプロフェッショナルにふさわしいものが出来上がるのは言うまでもありません。

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技術のために何故そこまで道具にこだわるのか

第一に「お客様に直接触れるものだから」というのは上記にも書きましたが、クセの度合いによってハサミを変えたりします。

ハサミひとつとっても刃の形状はまっすぐな直刃、外側に向かって丸みを帯びた笹刃(ささば)、丸みがありながらも直刃に近い柳刃(やなぎば)等、ここで記事で語るとかなりの文章力になってしまうので、割愛しますが、やはり髪の形状によってハサミの刃の形状も変えるべきだ、と私は思うのです。

クセ毛のヘアカットを行う場合は尚更です。

本題の「クセ毛のヘアカット」について深く関連してるのだという事を知ってもらいたかったのです。

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クセ毛は直毛と違い、波状毛のように大きくS字のうねりを繰り返す毛や、縮毛のような細かくちぢれるようなクセ毛、連珠毛のような指でなぞるとボコボコとした質感のクセ毛など、形状が多様化している分、ヘアカットも同様にそれに分けて技術を私は使い分けております。

その際に、使う道具であるハサミも技術に合わせて選定する、というわけです。

クセ毛の髪の量の上手な減らし方は、「毛の量をどれだけ減らせるか」ではなく「どれだけシルエットを小さくできるか」。

どうしてもクセ毛の人は髪がうねる為、直毛の人よりも髪が膨張したり、広がりやすくなる傾向があります。

統計を正式にとっていないので数値化はできませんが、私の美容師としての経験上の話も交えると、クセ毛の人は髪の量が多い人が圧倒的に割合が多いです。毛の量が多いことにプラスしてさらにクセ毛のうねりが加わる二重苦なわけです。

初めて担当させていただくお客様によっては、「削ぎ鋏(ハサミ)」を入れると広がるのでそがないでください」と度々言われることがあります。これは、前の美容院で髪の量を減らしてくださいとオーダーしたらスカスカにそがれてしまい、そこからトラウマのようになって「そぎばさみ=悪」のようなイメージになってしまっているのでしょう。

しかしながら、正しくそして適切にそぎばさみを使えば、スカスカにもならず、広がることもありません。

むしろ、頭が一回り小さくなるくらい、しっかりとカットだけで収まります。

ポイントになってくるのはボトムの方の髪をどれだけ重めに残せるか、そしてハチ回りの毛の量をどれだけコンパクトに調整できるか、の2点だと私は考えます。ただ闇雲に毛の量を減らしてしまえば毛先はスカスカになってしまいますが、アウトラインになる部分はしっかり残していらない部分のみを取り除く、というイメージで行えば、シルエットは綺麗になり、そして頭は小さくなります。

シルエット、というのがポイントで、大切なのは「毛の量をどれだけ減らせるか」ではなく、「どれだけシルエットを小さくできるか」、だと私は考えます。ここがほかの美容師との違いでもあります。

技術者としての経験年数の浅い美容師などは、ここがわかっていないので、「どれだけの量を減らすことができるか」を追求して削ぎそぎばさみを入れる方もいますが、私はそれは違うと思います。むしろ逆です。最小の削ぎで最高のシルエットを作る、ということを追求してこそプロと考えます。

 

クセ毛のカットで特に重要になってくるのは「どこを残し、どこを無くすか」

髪をはさみで切る、というのは物理的に髪を取り除く事ですので、どこをカットするかよりも大切なのは「その毛を(頭に)残すか」だと考えています。

カットしていると、「軽くしてください」「量を少なくしてください」と言われる事が多々あります。しかしお客様に言われるがままに毛を削ぎまくったり、減らし過ぎるとスカスカになり、最悪の場合は余計に広がって頭が大きく見える原因になってしまいます。

私はお客様にしっかり説明した上で、

「適度な重さ、量は残し、いらない部分はしっかり取る。」

この方法をお勧めしております。

その為に必要なのは、バリエーションのあるハサミです。そもそも髪を切断するわけなので、その接点である刃の形状はとても大切になってきます。私の場合は、毛先を折ってしまわないように、削ぎ鋏であればV刃ではく「溝無し」刃を、断ち切るハサミはストロークカットで笹刃を使用し、髪を傷めないように細心の注意を払ってヘアカットをしています。

 

 

パネル、スライスをしっかり考えたカットであれば髪は収まる

ヘアカットでは毛髪以外に、頭の丸みを考えなければなりません。頭を上から下に4ブロック、それを細かく縦に分割してスライスし、丁寧にヘアカットをしていきます。シャンプーの後にカットをする場合もありますが、私の技法としてはドライカットですべてのスタイルを作る事が多いです。(裾の長さ15センチ以上カットする場合を除く)

理由としては、髪は濡らすと毛髪の内部にあるタンパク質の結合「イオン結合、ペプチド結合、水素結合、SS結合」のうち、水素結合が毛髪内部で切れる為、髪が柔らかく分カットがしやすくなります。しかしドライカットはその逆で、水素結合が切断されていない状態で髪を切る為、お客様が家で実際にどれくらい、髪が膨らむのか??どれくらいのクセがあるのか?というのをイメージし、手入れのしやすいスタイルを作る事ができます。

主にドライカットをメインにする理由は上記の理由からです。シャンプー後の、水で塗れた状態でのカット(ウエットカットと言います。)はそれはそれでメリットがあるカット技法なので、髪の状態によって使い分けております。

どちらにも言えることは、感覚的なヘアカットでは、髪は収まらない、という事。しっかりと頭の丸み、骨格、毛流を考えたカットこそ、手入れのし易いヘアカットだと言えます。

 

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佐藤 公徳

代表取締役社長美容院LUPIAS
ダメージレスでツヤのある髪を作る事をベースにしたヘアスタイル作りを専門分野としている。 本当に「髪にいいもの」を探し、全国に点在するカラー、パーマ剤の研究所および製造工場にまで足を運ぶこだわり派。サロンワークを中心に、美容商品開発、企画を行う。 モットーは、「自分が本当に良いと思ったものしか顧客に提供しない」 美容師歴18年に裏打ちされた技術とノウハウで、多くの女性の髪の悩みを解決している。 夢は、「日本のみならず、海外にいる人たちの髪の悩みも解決する事」。 フジテレビ「笑っていいとも」日テレ「ZIP」等、多数のメディアに出演。 Amazonヘアケアランキング3年連続1位を獲得した著書「青山のトップスタイリストが教える巻き髪講座」他、4冊の本の著者でもある。 詳しくはこちら https://lupias.com/shukumou/personal-history/