【技術について】シャンプーについてのこだわり

美容院が苦手、という人もいれば、美容院に行くのが毎回すごく楽しみだ!という人もいると思います。

「美容院に行くのが楽しみ」派の方に話を聞くと、ぶっちぎりで「シャンプーされるのが楽しみ」という方が多いきがします。

 

今回はそんな「美容院で行うシャンプー」について解説します。

 

お客さんと美容院側の「良いシャンプー技術」の認識には隔たりがある

 

お客さんにとって美容院でうける「良いシャンプー」と思える要素の一つに、「気持ちのいいシャンプー」というのがあると思いますが、美容師側にとってそれは必ずしもそれが正解という訳ではありません。

美容師にとっての「良いシャンプー」とは「技術としてのシャンプー」です。

 

つまり、

マッサージの要素を含んだ「リラクゼーション」としての気持ちいいシャンプーではなく、リラクゼーションを抜きにしたあくまで「技術の仕込みとしての毛髪の洗浄」なのかの違いです。

 

気持ちのいいシャンプーとはなんぞや??

お客さんは「髪の毛そのもの」のみをゴシゴシ洗ったところで気持ちよさは感じないでしょう。

髪はあくまで死滅細胞であって、髪に神経や痛覚が無い為、髪そのものを洗浄しても気持ちいと感じないのはそのためです。

(もし毛髪自体に感覚があったら恐ろしい事です。もしそうだったら、毛髪をヘアカットをする為に、激痛が走るはずですよね)

 

なので、お客様が気持ちいいと言ってくれるほとんどは、毛髪を洗浄している行為よりも、「頭皮に対して」なにかしら美容師がシャンプーの為に指でこすったり揉んだり、などのアクションをしている時になります。

 

シャンプーがお客さんに褒められるアシスタントに共通する事

 

私は独立前に、かつて勤めていた美容院で、やたらとお客さんにシャンプー褒められるアシスタントのコがいまして、そのコに「どうやってんの??」と聞いたことがあります。

 

そのコ曰く、気持ちいいとお客さんに褒められるシャンプーとは、ポイントが2点あるそうで、

1.「お湯はやや熱め」

2.「指で擦る、というよりは指圧で揉む」

 

という感じのシャンプーとのことです。

いわゆる美容師的に言うところの、縦洗いの揉みシャンですね。

どっちかというと頭皮を揉みほぐしたり、指圧する「ヘッドスパの技法」に近い、シャンプーです。

 

でも、お客さんに喜んでもらおう!と努力するその気持ちは素晴らしいですが、果たして

それは美容技術として本当にいいシャンプーなのだろうか??と私は常々、疑問を抱いていました。

 

私がシャンプーで「お痒いいところはございませんか??」と聞かない理由。

 

基本的にどのくらいの温度のお湯で頭のドコをどう洗浄するかはお客さんではなく、美容師側にお任せした方が良いです。

 

ちなみに私がシャンプーをする場合、

私が適温だと思った温度で、適切だと思った箇所を洗い、私がすすぎが十分だと思ったらシャンプーを終えます。なので、美容院で必ずお客さんが美容師に聞かれる「お痒いところはございませんか??」とか「お湯の温度はいかがでしょうか??」「力加減はよろしいでしょうか??」…etcのセリフは一切、お客さんに聞きません。

 

理由としては、例えば以下のケースをご覧ください。

 

ケース1

お客さん「もうちょっと強く洗ってもらえますか??」という場合….

 

カラーの施術前に行うシャンプーなので、頭皮のバリアの役目を果たしている皮脂を取りすぎてしまうとカラーがとても沁みる為、シャンプーの強さは私が決めます。

カラーに含まれているモノエタノールアミンやアンモニアは揮発性の為、強い指圧でこすっても目に見えない細かい傷がつくのですが、そこから刺激があります。最悪の場合、ジアミンによる接触性アレルギー皮膚炎になりかねませんのであまり強すぎるシャンプーはおすすめ致しません。

 

ケース2

 

お客さん「もっとお湯をあつくしてもらえますか??」という場合….

 

お湯の温度で薬剤の反応が変わってしまうため、お湯の温度は美容師側にお任せしてもらえると仕上がりが良いです。例えば、薬事法で認められているパーマの加温温度は60度までですが、温度が10度上がるごとに反応速度は2倍に跳ね上がります。

 

ケース3

お客さん「耳の周りが泡だらけで気持ち悪いので早く洗い流してください」

 

縮毛矯正剤の1液である還元剤は、増粘剤が含まれている為、お湯単体では洗い落ちません。アニオン界面活性剤であるシャンプーで油をローリングアップといって増粘剤の成分を浮かせたうえで包み込むようにしてしっかり洗い流さないと、特にもみあげの部分なんかお湯洗いだけで洗い落とせなかったまま、高温アイロンするととてつもなくビビり毛になってもう2度と髪は直らなくなってしまいますので、泡でしっかり洗い落とすのをお勧めします。

 

………..etc

 

どうでしょうか??

 

当店のシャンプーは、ただ「髪を泡立てて、こする」という領域を超えて、プロとしてここまで先の先まで考え抜いてやっています。

 

こんな感じのやり取りになってしまうので、「お湯加減よろしいですか??」などのセリフは初めから私は聞きません。

 

聞いたところであまり意味が無いからです。

もちろん、痒かったり痛かったり、(首が)苦しい…とかのご要望はお聞きしますが、お湯の温度とか洗う順序、水圧….etc は、ひとつひとつが上記のような「そうする理由」があってやっているので美容師側にお任せいただけたらと思います。

 

シャンプーが複数用意されてあり、お客さんがどのシャンプー剤で美容師に洗ってもらえるかを選べる、というサービスをしている美容院もありますが、(カウンセリングシートでシャンプーの強弱の強さを選べる項目があったりとか)

私のサロンではそのような事はしません。

そこもやっぱり、お客さんに「何のシャンプーを使うか??」すらも美容師である私が勝手に決めます。笑

 

アニオン界面活性剤(シャンプー)だけとっても、代表的な成分をいいますと例えば、高級アルコール界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、α-オレフィン系、アミノ酸系、タウリン系(ココイルメチルタウリンNaとか)、もうこのほかにも書ききれないくらい沢山あります。

そして上記のアミノ酸系のシャンプーだけ見ても、「グルタミン酸系」「アラニン系」「グリシン系」の3つに分かれるんです。

 

そして羅列したこの成分が一体どんな髪にあっていて、どのような技術をする前にやるべきか??を決めるのは、お客さんに自由に選ばせるのではなく、美容師免許(国家資格)保有者である美容師がやるべき仕事であると私は思っています。

そういう場面でもお客さんにアドバイスできるように、苦労して勉強し、国家資格までとってきて毛髪の知識を付けています。

 

「私はしっかり泡立ててシャンプーしたい派だから、今回はアミドエーテル硫酸系の、PEG-3 ヤシ油脂肪酸アミドMEA硫酸Naのシャンプーはあるかしら??」

 

なんてマニアックなオーダーするお客さんは普通に考えたら美容院に来ないわけです。

(もしいたら、おそらく相当なシャンプーマニアか美容師です)

 

素人であるお客さんに自由に選ばせるのって、言い過ぎかもしれませんが

プロの医者が素人である患者に「お薬処方しますが、どんなお薬にしますか??自由に選んでくださいね♪(でも自己責任でね!)」と言っているようなものに私は感じます。

 

美容院で「シャンプー=気持ちいい」というのを求めるのは間違い

 

上記の理由からハッキリしている事は弊社LUPIASではシャンプーをリラクゼーションととらえておらず、あくまでプロが提供するカット、カラー、パーマなどの施術前の「美容技術」の一環として、そして「仕込みの技術」と考えているのでそもそもシャンプーでお客様に「気持ちよくなって頂こう」とはこれっぽっちも思っていません。

 

そもそも気持ちよくなってもらう、という目的でシャンプーをやっているワケじゃなく、最大の目的は「ヘアスタイルを作る仕込みのため」に「技術として」やっているので、お客さんの「気持ちいい」を最優先してたらいいヘアスタイルは作れませんし、最悪、毛髪や頭皮を傷めます。

 

想像してみてください。

例えば「手荒れ」ですが、あの手荒れでパックリ割れた傷口にパーマ液を小さじ一杯分でも触れたらどうなるのでしょうか??

 

特にパーマ液の1液であるチオグリコール酸アンモニウムだったとしたら…もう、飛び上がるほどの激痛が走るでしょう。

(というか私はこれを何度も経験したことありますが、飛び上がるとかいうレベルを超えるくらい痛いです。サルファイト系のパーマ還元剤も、化粧品登録の製品の割には死ぬほど傷口にたいして沁みますので要注意です。)

それが、世間で「気持ちいい=上手い」と言われる、なにも考えずにお客さんの気持ちいいを最優先し、お客さんに言われるがままの強さのシャンプー方法ですと、ゴリゴリ、ガリガリとお客さんの頭皮に細かい傷をつけてしまい、お客さんの頭皮の上で同じ「激痛」「炎症」が大いにあり得ます。お湯の温度もそうです。

 

もっとわかりやすく例えると、パーマ液の痛みはカッターで切った指の切り傷に、しょうゆを浸す感じでしょうか。考えただけで痛くなってきたので、これに関してはここらへんにしときます。

 

美容院LUPIASが考える、「上手いシャンプー」の定義とは??

 

美容院LUPIASが考える、美容技術として行うシャンプーは、あくまで薬液の浸透を妨げる不純物を髪から取り除く「毛髪の洗浄」であり、それ以上でも以下でもありません。

毛髪科学にもとずいて施術前や施術後に、どういったシャンプー(洗浄方法)がふさわしいかを美容師側が考え、決めます。

時には、「これがベストだろう」と思ったらお湯洗いのみで、泡立てすらしない時さえあります。(頭皮の油の被膜を一切取らないようにするため)

 

たまにネットの口コミで

「○○の美容院はアシスタントのシャンプーが気持ちよくないから2度と行かない」

とか、

「○○という美容院はシャンプーがめちゃ上手くて最高でした」

 

とか、

シャンプーにこだわりがあるお客さんの口コミを見る事があるのですが、そういったのを見る度に、

美容師とお客さんの「良いシャンプーとは??」の定義がずれてるなぁ~、と感じます。

 

「上手いシャンプー」とは、けっして「気持ちのいいシャンプー」とイコールではない、という事を皆さんに知ってもらいたいです。

美容技術としてのシャンプーは時に、気持ちの良くない事も多々あります。

でも「美容技術としては上手い」事はあります。

「良薬口に苦し」です。

 

まがりなりにも人体の毛髪に直接、化学薬品を塗布する事に、国家試験をクリアして美容師免許を保有している私達にとって、頭皮と毛髪の安全、ひいてはヘアスタイルの出来栄えにさえ影響する大事な技術ですので、シャンプーに関してはお客さんの要望をただただ鵜呑みに聞くわけにもいきません。

 

”本当の上手いシャンプー”はわかりずらい!?

 

余談ですが、

「こ、こいつはシャンプーが上手い….!!!」と現役美容師歴19年の私をも唸らせた人物が過去に一人だけいます。

その人曰く、お客さんには全然、シャンプー褒められないそうです。

そりゃそうです。毛髪科学にもとづいた玄人のみが知りえるシャンプーのワザなんて、よほど美容師としてのキャリアと経験が無いとその上手さを見抜けません。

玄人向け過ぎて、一般顧客には”本当の上手いシャンプー”はわかりずらいのです。

 

例えば、縮毛矯正の1剤の流しの時にあえて最初に襟足部分から洗う美容師に対しては

(バックシャンの時)「首を倒したときに還元剤が襟足の地肌に付きまくると根本からバキッと折れた仕上がりになるから、それを防ぐためにこの手順でやってるんだろうな。」

 

とか、

 

「カラーの白髪染めの流しの時にあえて、いきなりフェイスラインにシャワーを当てるような事をせずに、毛穴の方向に沿ってカラーを押し出すように乳化して汚れを落とす」ような美容師だと、

 

「リムーバー使わないで白髪染めを落とす技術をちゃんとわかってる人だな~」

とか思います。(これを知らない人はいきなりフェイスラインをガリガリやり始めます。)

 

「シャンプーの上手いアシスタントは良いスタイリストになれる」という大ウソ。

 

美容師業界ではよく、「シャンプーの上手いアシスタントは良いスタイリストになれる」

なんて言われます。

シャンプーでお客さんに「気持ちいい」といってもらえて、シャンプーの指名をもらえるようなアシスタントは、スタイリストになってもきっといいスタイリストになれるだろう、と。

でも、「良いシャンプーとは??」という定義をしっかり持ってシャンプー技術に励まないと、リラクゼーションとしての技術なのかケミカルを絡めた技術なのか、わからないままにただお客さんにシャンプー技術を提供するのは良い結果を生まないと思っています。

美容院LUPIASでは、社員教育の段階でこの「シャンプー技術とはなんぞや??」の定義を明確にしてしっかり教育するようにしています。

 

※ちなみにリラクゼーションメニューとして、「気持ちいいシャンプー」にはヘッドスパをご用意しておりますので、もし気持ちのいいシャンプーやリラクゼーションを求めるお客様にはヘッドスパメニューを別途ご用意しております。そちらの施術の方がご満足いただけるかと思います。

 

まとめ

「上手いシャンプー」とは、けっして「気持ちのいいシャンプー」とイコールではない

 

美容院で「シャンプー=気持ちいい」というのを求めるのは間違い。気持ちいいを求めるなら、シャンプーよりもヘッドスパがおススメ。

 

お客さんと美容院側の「良いシャンプー」の認識には隔たりがある。

お客さんにとって「良いシャンプー」とは「気持ちのいいシャンプー」だが、

美容師にとっての「良いシャンプー」とは「技術としてのシャンプー」である。

 

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表参道の美容院「LUPIAS」を運営する、株式会社Mastermind代表取締役社長。 その他にもヘアケア商品販売の会社の社長も務める。 2社の会社を経営する傍ら、仕事は「現場主義」を徹底し、自らも美容師として日々サロンワークを精力的にこなしている。

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